弊社は長きにわたり、食品添加物の製造・販売業に従事して参りましたが、昨今、弊社の顧客であります食品加工業者の皆様から表題に関するお問い合わせを数多く受けております。
そこで、弊社の[食品添加物製造届]の主務官庁である栃木県保健福祉部生活衛生課に質問書を提出し、同課から食品衛生法を所管する厚生労働省および食品表示法を所管する消費者庁に確認していただきました。
その回答と見解を 2022年8月26日付 で受領致しましたので、[食品添加物:高度サラシ粉および次亜塩素酸ナトリウム]の利用に伴う使用基準から見た加工助剤の在り方を、弊社顧客の皆様に正しく理解していただく為に、この度、栃木県からの回答と見解、更には弊社の解釈もあわせる形でご案内する事にしました。
ご一読下さいます様、宜しくお願い申し上げます。
【質問①】
食品添加物殺菌料である[次亜塩素酸ナトリウム]や[高度サラシ粉]を用いて殺菌処理した食品は、その処理後に食品表面に付着して残っている塩素(残留塩素)を、最終食品完成前に分解または除去する必要がある。
以上の認識に誤りはありますでしょうか。ご回答ご教授をよろしくお願い申し上げます。
【質問①の回答】
●食品衛生法(昭和22 年法律第233 号)第13 条第1項の規定により、厚生労働大臣は、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、販売の用に供する食品又は添加物の製造等の方法に係る基準又は成分に係る規格を定めることができることとされており、これに基づき、「食品、添加物等の規格基準」(昭和34 年厚生省告示第370 号。以下「規格基準」という。)が定められている。
規格基準において、次亜塩素酸ナトリウムについては、ごまに使用してはならないとの使用基準が定められているが、次亜塩素酸ナトリウム及び高度サラシ粉について、最終食品完成前に分解又は除去しなければならないという使用基準は定められていない。
●食品の加工の際に添加される食品添加物は、原則、物質名で記載することになっているが食品表示基準(平成27 年内閣府令第10 号)により規定される加工助剤については、「食品の加工の際に添加されるものであって、当該食品の完成前に除去されるもの、当該食品の原材料に起因してその食品中に通常含まれる成分と同じ成分に変えられ、かつ、その成分の量を明らかに増加させるものではないもの又は当該食品中に含まれる量が少なく、かつ、その成分による影響を当該食品に及ぼさないものをいう。」とされており、次亜塩素酸ナトリウム及び高度サラシ粉が、食品の加工の際に添加物として使用され当該規定に該当するものであれば、当該添加物の食品表示については省略することが可能となる。加工助剤に当たるかどうかは、当該添加物の使用基準、使用実態等に即して個別に判断するものであるため、添加物が最終食品の完成前に除去されないなど上記の規定に該当しないのであれば加工助剤には当たらず、除去されるなど上記の規定に該当するのであれば加工助剤に当たるものと考えられる。
●次亜塩素酸ナトリウムや高度サラシ粉の使用基準等は上記のとおりであるが、本県では食品の加工の際に添加物として使用された場合は、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止するため、当該添加物を除去することの必要性等について指導を行っている。
弊社からのコメント(回答①)
[次亜塩素酸ナトリウムおよび高度サラシ粉]につきましては、最終完成前に分解又は除去しなければならないという使用基準は定められておらず、食品衛生法上の制限は存在していません。この事により、最終完成前に分解又は除去しなければならないという法的な根拠は無い事を確認しました。
しかしながら、両剤ともに、加工助剤として該当されるべく(※1)使用し、飲食に起因する衛生上の危害の発生を未然に防止するべきであるという地方自治体からの指導はあり得ると捉え、結果として、最終完成前に分解又は除去し、加工助剤として適用される方法で利用される事が望ましいと理解し、その様に捉えました。
(※1)加工助剤の定義に該当すれば、表示の省略ができるという観点から、「加工助剤に該当されるべく使用し…」と表記しています。
【質問②】
上記の食品添加物殺菌料を食品の殺菌処理に用いた場合、「液切り」や「脱水処理」をかける事によって食品の表面に付着して残ってしまう塩素(残留塩素)を取り除き、この後の「液切り保管」中に、この残留塩素の分解が促進され、結果として対象食品から、この残留塩素が検出されなければ、最終食品完成前に分解され除去されたと見なされる。
以上の認識に誤りはありますでしょうか。ご回答ご教授をよろしくお願い申し上げます。
【質問②の回答】
質問①の回答のとおり、次亜塩素酸ナトリウム及び高度サラシ粉については、規格基準において、最終食品完成前に分解又は除去しなければならないという使用基準は定められていない。その他の食品添加物殺菌料において、最終食品完成前に分解又は除去しなければならないという使用基準が定められている品目もあるが、その場合であっても、分解又は除去のための具体的な処理方法は定められておらず、処理方法について法令上の制限はないものと理解している。
弊社からのコメント(回答②)
重ねて、[次亜塩素酸ナトリウムおよび高度サラシ粉]につきましては、最終完成前に分解又は除去しなければならないという使用基準は定められていません。従いまして、分解又は除去の方法についても、具体的な方法は定められておらず、又、その処理方法に法令上の制限は無いという確認が取れました。この事から、例えば、水洗以外の方法であったとしても、最終食品完成前に分解又は除去出来ていればそれで良く、法的にその方法は問われないという理解をし、その様に捉えました。
【質問③】
上記の食品添加物殺菌料で食品を殺菌処理した後に「軽微なすすぎ洗い」をしたとしても、最終食品完成前に、この残留塩素が検出されれば[加工助剤の定義]には合致しない。
以上の認識に誤りはありますでしょうか。ご回答ご教授をよろしくお願い申し上げます。
【質問③の回答】
食品表示基準における加工助剤の規定については、質問①の回答のとおりであり、次亜塩素酸ナトリウム及び高度サラシ粉が、食品の加工の際に添加物として使用され当該規定に該当するものであれば、当該添加物の食品表示については加工助剤として省略できることとなる。加工助剤に当たるかどうかは、当該添加物の使用基準、使用実態等に即して個別に判断するものであるため、添加物が最終食品の完成前に除去されないなど当該規定に該当しないのであれば加工助剤には当たらず、除去されるなど当該規定に該当するのであれば加工助剤に当たるものと考えられる。
弊社からのコメント(回答③)
[次亜塩素酸ナトリウムおよび高度サラシ粉]につきましては、最終食品完成前に分解又は除去(回答②により、その方法は問わない)されていれば、加工助剤として適用され、当該添加物の食品表示については省略可。但し、当該添加物を用いて、軽微な水洗を施し、その結果として、最終食品の完成前に除去されないなど、当該規定(※2)に該当しない場合には、加工助剤としては適用されないという理解をし、その様に捉えました。
(※2) 加工助剤の定義は次のとおりである。
①食品の加工の際に添加されるものであって、当該食品の完成前に除去されるもの
②当該食品の原材料に起因してその食品中に通常含まれる成分と同じ成分に変えられ、かつ、その成分の量を明らかに増加させるものではないもの
③当該食品中に含まれる量が少なく、かつ、その成分による影響を当該食品に及ぼさないもの
【質問④】
[大量調理施設衛生管理マニュアル]には、「原材料の殺菌に次亜塩素酸ナトリウム等を用いて殺菌処理をした後、流水で十分にすすぎ洗いを行うこと」と記載されているが、これは、最終食品完成前に、残留塩素を分解又は除去するための一般的な処理方法を例示したものであり、別の方法で残留塩素が除去されていれば[加工助剤の定義]に合致する。
よって、「殺菌処理後に流水で十分にすすぎ洗い(水洗処理)を行うこと」を法的に定めたものでは無い。
以上の認識に誤りはありますでしょうか。ご回答ご教授をよろしくお願い申し上げます。
【質問④の回答】
●大量調理施設衛生管理マニュアル(平成9年3月24 日付け衛食第85 号別添)において「必要に応じて、次亜塩素酸ナトリウム等で殺菌した後、流水で十分すすぎ洗いする」との記載があるのは事実であるが、同マニュアルは、集団給食施設等の大量調理施設における食中毒を予防するため、HACCP の概念に基づく標準的な衛生管理の方法をマニュアルとして示されたものであり、個別の食品添加物の使用方法等を規制するものでもなく、同マニュアルにおいても、「次亜塩素酸ナトリウム溶液・・・を使用する場合、食品衛生法で規定する「食品、添加物等の規格基準」を遵守すること」と示されたことと解している。
●食品表示基準における加工助剤の規定については、質問①の回答のとおりであり、次亜塩素酸ナトリウム及び高度サラシ粉が、食品の加工の際に添加物として使用され当該規定に該当するものであれば、当該添加物の食品表示については加工助剤として省略できることとなる。加工助剤に当たるかどうかは、当該添加物の使用基準等、使用実態等に即して個別に判断するものであるため、添加物が最終食品の完成前に除去されないなど当該規定に該当しないのであれば加工助剤には当たらず、除去されるなど当該規定に該当するのであれば加工助剤に当たるものと考えられる。
弊社からのコメント(回答④)
大量調理施設衛生管理マニュアルは、対象者が集団給食等の広範囲に渡るため、その中には、専門知識に乏しい事業者様もおられます。そこで、あくまでも標準的なマニュアルを提示したものであり、[次亜塩素酸ナトリウムおよび高度サラシ粉]を使用後に、流水で十分なすすぎ洗いを施す事を法的に示したものでは無く、あくまでも一般的な例の一つとして、すすぎ洗いという方法を提示したまでであるという確認が取れました。従いまして、大量調理施設衛生管理マニュアル中には、「原材料の殺菌に次亜塩素酸ナトリウム等を用いて殺菌処理をした後、流水で十分にすすぎ洗いを行うこと」という記載こそ見られますが、違う方法で除去出来れば、殺菌処理後に必ずしも水洗しなければならない(※3)という趣旨では無いという理解をし、その様に捉えました。
(※3)水洗いは一般例であるため、「違う方法で除去できれば、殺菌処理後に必ずしも水洗しなければ…」と表記しています。
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